大判例

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甲府地方裁判所 昭和27年(レ)11号 判決

訴訟費用は第一、二審を通じ、内金八百円を控訴人の負担とし、その余は被控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴人は主文第一、二項と同趣旨および訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求める旨申立て、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるからここに、これを引用する。

<立証省略>

三、理  由

被控訴人の主張によると、被控訴人は昭和二十六年五月二十八日島田綱次に対し金一万円を貸与し、控訴人は同日外一名の者と共に島田の右消費貸借上の債務について連帯保証をしたというのであつて、これが貸金証書である甲第一号証中控訴人の印影が控訴人のものであることは控訴人の認めるところであるけれども、当審証人小川利栄の証言によると、右印影は控訴人の不在中その内縁の夫である同証人が控訴人に無断でその印を押捺したものであつて控訴人の捺印したものでないこと及び同号証中控訴人の氏名も右小川が冒署したものであることが明らかであるから右書証中控訴人に関する部分は到底真正に成立したものとは認め難い。従つて甲第一号証をもつて控訴人が被控訴人主張の消費貸借について連帯保証をしたということの証拠とすることはできないし、他にも亦被控訴人の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。却て前記証人の証言によれば、控訴人は昭和二十六年四月頃島田綱次の被控訴会社に対する金一万円の借受金債務につき連帯保証人となることを承諾し、その借用金の証書に連帯保証人として署名捺印したところ、島田はこれにより被控訴会社から金一万円を借用したに拘らず同年五月下旬、前記のとおり控訴人の不在中その内縁の夫小川利栄に対し、右借用金証書では被控訴会社から金員を借用できなかつた旨を申し詐つて証書を作り直してもらいたいと懇願したので、小川は前回借受金につき単に証書を書換えるにすぎないものと誤信し、控訴人に無断で金一万円の借用金証書(甲第一号証)に連帯保証人として控訴人の氏名を記載しその名下に控訴人の印章を押捺したものであること、しかるに島田は右借用金証書(甲第一号証)を利用し重ねて被控訴会社から金一万円を借受けたことを認めるに十分である。

そうだとすると甲第一号証の借用金証書による貸借につき控訴人が連帯保証人たることを自ら承諾したことは勿論その承諾方につき小川又は島田に代理の権限を与えたこともないことは明らかであるから控訴人は右貸借上連帯保証人たる責を問われる筋合がないと謂うべきであつてこれと相容れない主張を前提とする被控訴人の本訴請求は全く理由がない。

したがつて被控訴人の請求を認容した原判決は失当であるからこれを取消し、被控訴人の請求は棄却すべきものとする。しかしながら、控訴人は本訴における防禦に急なるの余り原審において本件甲第一号証中の控訴人の印影が自己の印顆により顕出されたことまで否認したため、被控訴人は印影の鑑定により、その印顆と一致することを立証する必要を生じるに至つたものであり、これが費用はまさしく民事訴訟法第九十条に所謂「訴訟の程度において権利の伸張に必要なりし行為に因りて生じたる訴訟費用」というべきであるから訴訟費用の負担については控訴人勝訴にかかわらず、敗訴の被控訴人とともに控訴人にも主文掲記のとおり右訴訟費用の一部を負担せしめるのを相当と考える。

よつて民事訴訟法第八十九条、第九十条、第九十六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川喜多正時 駒田駿太郎 青山達)

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